今週のお題「小さい春みつけた」
沈丁花の香り。
まだ寒い日もある中で、沈丁花の香りがすると「春が来るな」と感じます。
3月は卒業シーズンでもあるし、社会人になってからは異動シーズンで。
自身に思いがけない辞令が出た春もあるし、周りの環境が変わる心細さに動揺する春があったり。
そういう時季にふと届く沈丁花の香りは、心の機微にそっと寄り添ってくれるように感じます。
くよくよしていても、取り乱した内心を営業スマイルで取り繕った帰り道も、かけてもらった期待に押しつぶされそうな時も、新しい肩書の名刺に頑張らなきゃと背筋を伸ばす時も。
抱えていた感情はその時々によって様々で、決してプラスの心持ちだけではなかったはずだけど、それでも沈丁花の香りは好きです。
心揺らぐネガティブな春もあったけど、それでもなんとかやってこれた。
私の状況とは関わりなくまた春が来て、季節は巡る。この先もそうしてやっていく。
沈丁花の香りは、お守りみたいなものです。
それから、もう一つ。
この時季は異動などに伴って、寄せ書きや手紙を書いたりもらったり、離任や着任の挨拶を交わしたり。
普段以上に「ことば」に意識が向いているのもあり、心持ちが不安定で隙も多いのか、たった一言に救われたり、それこそ一生のお守りになるような「ことのは」に触れる機会もありますよね。
お守りはそっと大切にしまっておいた方が良いと思うのですが。
私がこの時季になると毎年思い出して励まされるエピソードを一つだけお披露目します。
当時私は和菓子屋の販売員として、百貨店内の店舗で働いていました。
その春、私自身の異動も決まっていましたし、他にも離れていく人が何人かいらっしゃり、色んな会社の人が集まって合同で歓送迎会をしてくださったんです。
その席で、百貨店側の当時のマネージャーが、スキマスイッチさんの「奏」を歌ってくださいました。
「この歌は普通に捉えたら恋人に歌ってるけど、親から娘に贈る歌やって解釈もいいよな。」とおっしゃったんです。
感度の鈍い私は、その時は「なるほどね」くらいにしか思えなかったんですが…
帰宅後一人になって歌詞を振り返って、涙が止まりませんでした。
もちろん私が勝手に都合よく解釈しただけのことかもしれません。
ご本人も覚えていらっしゃらないかもしれません。
それでも私は、はなむけの仕方として「めちゃくちゃかっこいい!」と感動しましたし、あれから何度季節がめぐっても、忘れ得ない温かく心丈夫な思い出です。
さりげなくていいから、私も誰かの心に届く言葉を持ちあわせていたいと思うものの…いくら年齢を重ねても、まだ会得できていないような気がします。
目指す背中は見失わなければ遠くにある方がいいのかな。
そう思いながら、またこの春も精進を重ねたいです。